私が4歳になる頃、社宅からマイホームへと引越した。
マイホームはその時の私にとって、とても大きく夢のような家だった。
駐車場は屋根付きで車を3台とめることができ、母がガーデニングをするための広い庭もあった。
家の玄関を開けると二階の天井まで大きな吹き抜けになっていて、靴や傘用のクローゼットも付いていた。
リビングも和室もキッチンも…家族4人で住むには十分すぎるほど広かった。
2階には父と母の寝室(当時はまだ使っていなかった)である「大人部屋」と呼ばれる部屋と、私と弟の部屋である「子ども部屋」があった。
子ども部屋もバドミントンが出来るほど大きな部屋だった。
もちろん部屋は他にもたくさんあり、私は大はしゃぎした記憶がある。
そしてこの家から徒歩1分もしないところには学童もあった。
私は徒歩30分ほどの幼稚園への入園も決まっていたので、入園式の日を待つだけだった。
嬉しい、楽しい…決して悪いことはないはずなのに私の身体に問題が起き始めた。
髪の毛が抜ける……
「円形脱毛症」
私の髪は抜け始めた。
最初の頃は朝起きると枕元に大量の髪の毛が抜けているといった状態で、4歳の私は意味もわからず特別何か困るといった感情はなかった。
「抜けた髪の毛は自分で掃除して」と言われるので、「毎朝起きてから抜けた髪の毛の掃除をする」といったルーティンが出来ただけだった。
そしてまだ、自分の後頭部の髪がなく地肌が見えていることさえ気付いていなかった。
髪は毎日抜け続け、抜ける量も日に日に増えたいった。もちろん地肌の部分も多くなってきた。
さすがに母も気になり始めたのか、私は母に皮膚科に連れて行かれ外用薬、内服療法、光線治療が始まった。
すぐに治る。
きっと家族の誰もが思っていたと思うが、現実は厳しかった。
そして次第に自分でも、髪が抜けることに対して恥ずかしく思うようになった。