幼児期

お利口さんにしてればいいんだ

父の社宅に住んでいた私たち一家は、マイホームを建てることになった。

その頃私が3歳、弟が1歳。

ハウスメーカーに行くたび、まだ幼かった弟は母の実家に預けられ、私は両親に付いて行くこととなった。

デザインから全て考えていたので、当然のことながら毎回の話し合いは何時間にも及んだ。

私はその間、子供用のプレイルームに預けられた。

その当時は今のようにDVDなどはなく、持ち込みで自由にビデオを観ることが出来た。題名は忘れてしまったのだが、ユニコーンのビデオを私はひたすら観た。

約2時間のビデオだったのだが、終わると母が係の方にお願いしてまたすぐ再生。そして再生、再生…

一体同じビデオを何十回観たか分からないほど、繰り返し観た。他のビデオがあればよかったのだろうが、私の家にはおもちゃ、ビデオといったものがほとんどなかったのだ。なので繰り返し観るしかなかった。

係の方からお菓子をもらったりもしたが、私は食べ物を受け付けない子供だったので、一切口を付けることはなかった。

お菓子も食べない、全く動かない、騒がない…

そんな私はいつも「本当にお利口さんですね」と褒められた。母の顔は笑顔で嬉しそうに見えた。

「お利口さんにしてればいいんだ」

私はお利口さんにしてれば母が喜んでくれることを学んだ。

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